足のケアの重要性
米国では糖尿病の患者の25%(4人に1人)が生涯に足の創傷を経験すると言われています。また年間2%の患者が足に創傷を発症し、そのうち15%以上が下肢切断されていると報告されています。日本でも高齢化や食生活の欧米化に伴い糖尿病の患者が増えていることから、糖尿病の足病変のある患者もかなり増加することが危惧されています。その糖尿病患者の足病変を治療する難しさは、その複雑な病態にあります。糖尿病患者の足には、神経障害(足がしびれて感覚がない)、血流障害(動脈硬化で血流が悪い)、易感染性(傷から菌が入り感染しやすい)などの問題があり、小さな傷だったものが、徐々に大きな潰瘍になり、足を切断せざるを得ない状況に急になってしまう場合もあります。伊勢日赤では10年以上、そのような足病変の治療にチーム医療で取り組み、早期の治療だけでなく、予防と日々のフットケアが特に重要です。
当外来の対象となる方
- 糖尿病の期間が長い方
- 糖尿病で足病変や足趾切断の既往がある方
- 透析をされている方
- 足の血流が良くない(下肢閉塞性動脈硬化症)と言われている方
- 足のしびれが強く、たこができやすい方
- 水虫(足白癬、爪白癬)がある方
糖尿病患者さま等は定期的な受診を
当外来では潰瘍や壊疽まで進行しないように糖尿病足病変等の発症予防と早期発見に注力しています。具体的には定期的に患者さまの足を医師や看護師が診察する、患者さまご自身で足をケアできる方法を指導する、必要な場合は爪切りやたこ等の足の処置を行うなどいたします。なお診察の結果、より外科的な処置が必要と判断した場合は、当院と医療連携している伊勢赤十字病院(形成外科、皮膚科、整形外科など)と連携を取りながら診療していくこともあります。
また当院では糖尿病など生活習慣病に罹患している患者さまには、足に何の症状がなくても定期的な当外来の受診を勧めています。通院中に足に異変(傷、痛み、色調異常 等)の出現や悪化がみられたときは、受診日に関係なく速やかにご来院ください。
このほかにも個人で対応できる予防法として、喫煙をしている方の禁煙の実践をはじめ、常に足を清潔に洗い、保湿をしつつ異常がないかを毎日チェックする方法、足の爪を深爪しない切り方、足のサイズに合った靴を履く等を指導していきます。さらに、たこや傷の処置は自分で行わない、感覚が鈍くなっているので、お風呂でのお湯の温度を入る前に確認する、暖房器具やカイロをなるべく足に近付けずに低温やけどに注意する等のアドバイスも行っていきます。