糖尿病内科とは
糖尿病、もしくは糖尿病予備群といわれる方は日本に2000万人以上(5、6人に1人)いると言われるようになってきており、年々増加傾向にあります。それほどまでに身近な病気になりつつある糖尿病ですので、“糖尿の気がある”と言われた場合には、放置するのではなく、まずは身近なかかりつけ医に相談して診てもらう必要があります。日頃の食生活や生活習慣の見直しから始めるのが大切です。それでも血糖コントロールが上手くいかない場合には、薬物療法なども併行して行っていきます。
なお糖尿病だけでなく、ほかの生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症 等)に関しても診療しております。また健康診断の結果を見た医師から血糖値、血圧、コレステロール、中性脂肪、血清尿酸値などの数値が異常との指摘を受けたという場合も一度、当院を受診ください。詳細な検査を行い、発症の有無や予備群の可能性などもみていきます。
糖尿病
血液中に含まれるブドウ糖の濃度(血糖値)などが、慢性的に基準とされる数値を超えていると判定されると糖尿病と診断されます。そもそもブドウ糖は、脳や体のエネルギー源となるもので、血液中から細胞に取り込まれる際に膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンの働きが欠かせないとしています。このインスリンが何らかの原因で機能しなくなると、エネルギー源としては利用されずに血液中で必要以上に増えてしまいます。これによって高血糖状態が続き、やがて糖尿病を発症するようになります。
発症の有無を確認するために行われるのは血液検査で、血糖値やHbA1cの数値を見ていきます。診断基準については次の通りです。
- ①血糖値の数値:早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上、もしくは75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値が200mg/dL以上、あるいは随時血糖値が200mg/dL以上
- ②HbA1cの数値:6.5%以上
- ①と②、ともに該当する方は糖尿病と診断されます。①と②の一方のみ該当の場合は「糖尿病型」と判定し、再検査を行います。その結果、再び「糖尿病型」と確認された場合は、糖尿病と診断されます。
発症の原因は主に2つあるとしています。ひとつはインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が自己免疫反応などによって破壊されてしまい、インスリンがほぼ分泌されない1型糖尿病です。もう一つのタイプは、日本人の全糖尿病患者さまの95%以上を占めるとされる2型糖尿病です。この場合、遺伝的要因や不摂生なライフスタイルが組み合わさることで発症するとされ、膵臓は疲弊した状態です。これによってインスリンの分泌量が不足する、あるいはその量が十分でも効きが悪くなってしまいます(インスリン抵抗性)。上記以外にも別の病気(内分泌疾患、膵疾患 等)や薬剤の使用(ステロイドの長期投与)で発症する糖尿病もあれば、妊娠中の女性が分泌するホルモンの影響によって高血糖状態になってしまう妊娠糖尿病というのもあります。
主な症状ですが、発症初期や重症以外の場合は自覚症状が出にくいです。なお血糖値がかなり上昇するようになると、喉の異常な渇き、多尿・頻尿、全身の倦怠感、体重減少、頭痛などが現れます。
また糖尿病の状態を放置し続けると血管障害を引き起こすようになります。細小血管で起きる場合は、これらが集中する網膜、末梢神経、腎臓で重篤な疾患が発症しやすくなるので糖尿病三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)と呼ばれます。何もしなければ、失明、人工透析、壊疽を起こすこともあるので要注意です。このほか、太い血管は動脈硬化を促進させるので、この場合も虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳血管障害(脳梗塞 等)、下肢の閉塞性動脈硬化症 等の合併症を引き起こすリスクも高くなります。
治療について
糖尿病治療の目的は血糖をコントロールし、特徴的な合併症(神経症、網膜症、腎症)や動脈硬化の悪化を防ぎ、健康者と変わらない生活を送り寿命を全うすることです。
1型糖尿病の患者さまはインスリンがほぼ分泌されていないので、インスリンを体外から補充するインスリン注射が必要です。
一方、2型糖尿病の患者さまについてはインスリンが少ないながらも分泌されているので生活習慣の改善から始めていきます。食事療法では、適正なエネルギー摂取量とバランスのとれた食事メニューに努めます。またインスリンの作用不足を改善するため、脂質・タンパク質・炭水化物を制限するほか、食物繊維を多く含む食品は積極的にとるようにします。また運動療法はインスリンの働きを改善させます。メニューとしては、中強度の有酸素運動(ジョギング、水泳 等)を1日30分程度で十分とされていますが、毎日行うのが望ましいです。それでも効果がなければ、併行して薬物療法(経口血糖降下薬)も行います。使用する薬剤は医師が患者さまの食生活や生活習慣、血糖値に応じてオーダーメイドに組み合わせ、患者さまと相談しながらコントロール状態に応じて減量や追加を行います。それでも効果が乏しい場合はインスリン注射が必要となります。
高血圧症
血圧とは心臓から血液が血管(動脈)を通じて、各器官へと送られる際などに血管壁に加わる圧力のことを言います。この血圧が基準とされる数値を超えていると判断されると高血圧症と診断されます。その数値とは、収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上の場合となります。ただ家庭血圧では135/85 mmHg以上が高血圧と診断され、診察室血圧よりも家庭血圧を優先して診断と治療評価に用いることを推奨しています。
発症の原因は2つあるとしています。ひとつは、原因を特定することができないとされる本態性高血圧症です。ちなみに日本人の全高血圧症患者さまの8~9割が本態性高血圧症です。原因は不明とされていますが、遺伝因子、加齢、環境要因(塩分の過剰摂取、肥満、過食、喫煙、多量の飲酒、ストレス 等)などが組み合わさるなどして発症するのではないかと言われています。もうひとつは原因疾患があって、その一症状として高血圧となっている二次性高血圧症です。具体的には糖尿病腎症や腎硬化症等、腎実質の病変によるものもあれば、腎動脈の狭窄や閉塞など腎血管の異常によって発症する高血圧(腎性高血圧)、内分泌器官の病気(原発性アルドステロン症、)が引き金となって発症する内分泌性高血圧のほか、薬剤(NSAIDs、漢方薬の甘草、ステロイド 等)の影響や睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされる高血圧なども含まれます。
なお慢性的に血圧の高い状態が続いても自覚症状は出にくいです(急激に血圧が上昇することで、頭痛、めまい 等が起こることはあります)。ただこの状態を放置し続けることは常に血管壁に負荷をかけ続けていることでもあるので動脈硬化を進行させます。さらにそのままの状態が続けば血管内が狭窄、閉塞するなどの血管障害が起き、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、慢性腎臓病、下肢閉塞性動脈硬化症など、重篤な合併症を発症させるリスクが高くなりますので注意が必要です。
“血圧が高め“と指摘を受けた方は自覚症状がなくとも一度、当院を受診してみてください。
治療について
治療にあたっては、生活習慣、特に食生活の見直しが重要です。とくに塩分の摂取量に注力し、1日6g未満とします。さらに体内から塩分をできるだけ排出できるようカリウムを多く含む野菜や果物も積極的に摂取していきます。また肥満の方は心臓に負担をかけるので、運動を適度に行うなど減量する必要もあります。これらだけでは、血圧のコントロールが困難であれば、降下剤による薬物療法も行っていきます。
脂質異常症
血液中に含まれる脂質のことを血中脂質と言いますが、その中のLDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)の数値が基準とされる数値よりも高い、あるいはHDL(善玉)コレステロールが基準の数値よりも低いと確認されると脂質異常症と診断されます。同疾患は血液検査によって判定され、主に3つのタイプに分けられますが、診断基準については次の通りです。
- 高LDLコレステロール血症
- LDLコレステロール値が140mg/dl以上
- 高トリグリセライド(中性脂肪)血症
- トリグリセライド値が150㎎/dl以上
- 低HDLコレステロール血症
- HDLコレステロール値が40mg/dl未満
脂質異常症も自覚症状が現れにくい病気で、多くの患者さまは健康診断等での血液検査で発症に気づくことが多いです。それでも症状がないからと放置を続ける患者さまは少なくありません。ただ何の治療もしなければどのタイプであってもLDLコレステロールが血管に蓄積しやすくなります。これが動脈硬化を進行させ、さらに血管内で血流の悪化や血管閉塞がみられるようになれば重篤な合併症として、脳血管障害(脳梗塞 等)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、閉塞性動脈硬化症等の合併症を引き起こすこともあります。
なお発症の原因に関しては大きく原発性脂質異常症と二次性(続発性)脂質異常症の2つに分類されます。前者は遺伝子異常や原因が特定できないなどの脂質異常症を言います。後者は基礎疾患(糖尿病、甲状腺疾患、肥満症 等)のある患者さま、不摂生な生活習慣(過食、運動不足、喫煙、多量の飲酒 等)、薬剤の使用(ステロイドの長期投与 等)などによって引き起こされる脂質異常症です。
治療について
ほかの生活習慣病と同様に生活習慣を改善することから始めます。食事療法では、コレステロールを多く含む食品(卵黄、レバー、乳製品、肉の脂身 等)は控えます。野菜、海藻、きのこ類は積極的に摂取します。また飲酒される方は節酒をします。さらに運動をすることは中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があるので日常生活に取り入れます。内容は、中強度程度の有酸素運動(ジョギング、サイクリング、水泳 等)で1日30分程度でも効果は期待できますが、できれば毎日行うのが望ましいです。
上記のみでは数値のコントロールが難しいとなれば、薬物療法も行います。この場合、LDLコレステロールの数値を下げる薬(高コレステロール血症治療薬)、あるいは中性脂肪(トリグリセリド)の数値を下げる薬(高トリグリセリド血症治療薬)が用いられます。前者は主にスタチンやエゼチミブ、後者ではフィブラート系薬剤などが使用されます。
動脈硬化性疾患をお持ちの患者さまは、その進行抑制のためかなり厳格な脂質低下療法が必要になりますので、薬物療法を行う場合がほとんどです。
高尿酸血症
血液中の尿酸の濃度(血清尿酸値)が7.0mg/dl以上と判定されると高尿酸血症と診断されます。この尿酸というのは水に溶けにくい性質で、高尿酸血症の状態になると結晶化し尿酸塩として血液中で存在するようになります。その後、この尿酸塩が関節(とくに足親指の付け根)に溜まるようになると、白血球がそれを異物と認識して攻撃することがあります。これによって患部に炎症や腫れがみられ、強い痛みに見舞われることがあります。これを痛風発作(痛風)と言います。
なお痛風は高尿酸血症の患者さま全員が必ず発症するというものでもありません(高尿酸血症による自覚症状はない)。ただこの状態を放置し続ければ、尿路結石、腎機能低下による腎臓障害(痛風腎)のほか、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症 等)も併発しやすくなります。さらに動脈硬化を促進させ、脳血管障害(脳梗塞 等)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)を発症するリスクも高くなります。そのため、高尿酸血症と診断されたら症状がなくても尿酸値を下げる治療を行うようにしてください。
高尿酸血症のタイプは大きく3つのタイプ(尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、混合型)に分けられます。尿酸産生過剰型は、体内で尿酸が異常に作られた状態です。主に酵素異常による遺伝性の代謝疾患、造血器疾患(多血症、白血病 等)、薬剤(テオフィリン、ミゾリポン 等)の影響、プリン体を多く含む食品の過剰摂取(魚の干物、レバー、乾物 等)などが原因として挙げられます。尿酸排泄低下型は体内から尿酸が排出されにくい状態です。腎不全や尿崩症等の病気に罹患している、脱水状態にある、ケトーシスや高乳酸血症に陥っているといったことが考えられます。また薬剤(抗結核薬)の影響もあります。混合型は上記2つの症状がみられる状態です。肥満の方をはじめ、ハードに無酸素運動をしている、アルコールの過剰摂取といった場合に見受けられるタイプになります。
治療について
治療の目的は尿酸値を下げることになるわけですが、まずは生活習慣を見直していきます。食事療法ではプリン体を多く含む食品は控える、摂取エネルギー量を適切にする、高脂肪食や糖分を控えるなどします。また水分を積極的に摂取し、尿酸を体外排出させやすくするために1日の尿量を2,000ml以上にしていきます。このほか運動療法として、1日30分以上の有酸素運動(中強度でのジョギングやサイクリング 等)を行うようにしてください。無理のない運動量であれば尿酸値を下げる効果が期待できます。ただ運動の開始にあたっては医師に相談してください。ちなみに肥満も尿酸値を高める原因ですが、運動による減量でその改善にもつながります。
上記のみでは数値が改善できないとなれば、薬物療法も併行して行います。この場合は尿酸降下薬が用いられますが、患者さまの高尿酸血症のタイプによって尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット 等)、もしくは尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド 等)が使われることになります。
なお痛風発作が起きている患者さまには炎症や痛みを抑える治療薬として、NSAIDsやコルヒチン、グルココルチロイドなどによる薬物療法となります。同発作による症状が治まれば、尿酸降下薬による治療を行っていきます。